5年前の今日、午後2時46分。わたしは長野県東部に居た。クルマの中で揺れを感じ、すぐにラジオに切り替えた。切迫した声からことの重大さが伝わってきた。幸い、軽井沢の自宅では落下物も無く、被害は出てなかった。
テレビをつけたときの驚きは今でも忘れない。到底あり得ないような光景が映し出されていた。ただ、涙が頬を伝った。
「ただちに健康に被害を及ぼすものではない」と繰り返す政府。その「大嘘」がまかり通っていた時、人間がその能力を超えて手に入れてしまった施設では大変なことが起こっていた。
それでも政府は嘘を吹聴し続けた。
5年経っても、何も変わっていない。
変わったのはわたし達。
「テレビは真実を報じない」ということ。
政府にとって都合の悪い情報は隠蔽される。
住宅の周りを除染したから「帰還」しても大丈夫だと言う。
一度汚染されてしまった土壌が、そんな簡単に除染できるだろうか。
わたしにはすべてが「嘘に塗り固められた政策」に思える。
かのチェルノブイリでは、帰還などとは考えもせず、町を抹消した。
わたしは常々、「これは放射性廃棄物の影響を調査する人体実験だ」と呟いてきた。それは未だ続けられる。
お願いだから「帰還などという愚かな政策は見直してほしい」。
意味のない除染に使う膨大な費用があるなら、故郷を失った人たちへの補償に充てて欲しい。
安全な地で安らかな暮らしをさせてあげて欲しい。
中間処分場という名の最終処分場。ミエミエの政策が分かっているから地主は納得しない。ならば、すべて政府で買い上げ、県を超えた換地をすればいい。
汚染されてしまった地で、汚染ゴミを処分すればいいと思うのはわたしだけだろうか。
絆などという日本的精神論でこの国に放射性廃棄物をばら撒く前に。
今日は、発生時間に合わせて祈りを捧げた。
written by Yoshinobu Iriguchi